ぎっくり腰は、多くの人が一度は経験することのある痛みの一つです。
突然の腰痛により動けなくなる症状ですが、その原因は実に多岐にわたります。
その中でも、「広背筋」と呼ばれる背中の筋肉が関与している可能性があることをご存知でしょうか?
この記事では、胸腰筋膜と広背筋のつながりに注目し、ぎっくり腰のメカニズムを解説します。
胸腰筋膜とは?
胸腰筋膜は、背中の筋肉を覆う広い結合組織で、脊柱起立筋や腰方形筋、広背筋などの筋肉が付着しています。この胸腰筋膜には多くの神経終末が存在しており、痛みを感じやすい部位でもあります。
研究によれば、胸腰筋膜は腰部の痛みにおいて重要な役割を果たしていることが示されています。
例えば、2018年のある研究では、慢性腰痛患者の胸腰筋膜に硬化や緊張が見られ、それが痛みの原因となっていることが報告されています。
Langevin らは慢性的な腰背部痛を有する患者を超 音波で検査し、胸腰筋膜の厚みが有意に増しているこ とを見出した26)。この研究に続いて同じく Langevin らは同様の患者では胸腰筋膜のせん断ひずみ shear strain が最大 20%低下していることを報告してい る27)。彼らは異常な結合組織の構造が腰背部痛の素因 を作っているか、あるいは慢性の腰背部痛が原因で起 こる運動パターンの変化によって異常な結合組織がで きると考えている。https://core.ac.uk/download/267828785.pdf 腰背部痛における胸腰筋膜の関与 由留木裕子ら
この胸腰筋膜が損傷や過負荷を受けると、ぎっくり腰のような急性の痛みを引き起こすことがあります。
胸腰筋膜と広背筋のつながり
解剖学的に見ると、胸腰筋膜は広背筋の起始部にあたります。
広背筋は、肩甲骨や腕の動きに関与するだけでなく、体幹の安定性をサポートする重要な筋肉です。
この筋肉は、胸腰筋膜を介して脊椎と密接に連携しているため、広背筋の使い方が腰部の健康に大きな影響を与えることがわかっています。
特に、懸垂やデッドリフトといった広背筋に強い負荷がかかる動作では、このつながりが問題になることがあります。
不適切なフォームや突然の過負荷によって胸腰筋膜が引き伸ばされたり、損傷を受けることで、ぎっくり腰のような症状が引き起こされることがあります。
急に懸垂をして腰を痛める理由
広背筋は腕の引き寄せ動作で主に働きますが、このとき胸腰筋膜を通じて腰部を安定させる役割も担っています。懸垂のような動作では、広背筋が強く収縮するため、胸腰筋膜にも負荷がかかります。
特に、準備運動を怠ったり、普段運動習慣がない人がいきなり懸垂を行うと、広背筋や胸腰筋膜に過剰なストレスがかかり、腰痛やぎっくり腰を引き起こすリスクが高まります。懸垂中に腰が反ったり、力の使い方が不均等になることで、このリスクはさらに増加します。
腰痛に関する研究と広背筋の役割
腰痛に関する多くの研究が、体幹の安定性が腰部の健康に与える影響を示しています。
例えば、体幹筋群(腹横筋や多裂筋)が弱いと、腰椎への負荷が増加し、腰痛のリスクが高まることが知られています。
また、広背筋がこの体幹の安定性をサポートする重要な役割を果たしていることも解明されています。
さらに、運動療法が腰痛の予防や改善に効果的であることが数々の研究で示されています。
広背筋を含む体幹筋群の強化や柔軟性の向上は、ぎっくり腰の予防にもつながります。
ぎっくり腰を防ぐために
ぎっくり腰の予防には、広背筋を含む背部や体幹筋群の健康を保つことが重要です。
以下のポイントを参考に、腰痛を予防しましょう
- 適切なフォームで運動を行う
- 懸垂やデッドリフトなどの負荷が高い運動では、正しいフォームを徹底することが大切です。
- 準備運動とストレッチを怠らない
- 特に胸腰筋膜や広背筋をリラックスさせるストレッチを取り入れると効果的です。
- 体幹筋群を鍛える
- プランクや腹筋トレーニングを通じて、体幹の安定性を高めましょう。
- 過負荷を避ける
- 運動に慣れていない場合は、徐々に負荷を増やすことで怪我を防ぎます。
まとめ
ぎっくり腰と広背筋、そして胸腰筋膜のつながりは、腰痛の原因を理解する上で重要な要素です。
広背筋は胸腰筋膜を介して腰部と密接に連携しており、不適切な動作や過負荷がぎっくり腰を引き起こすことがあります。
適切な運動習慣を身につけ、腰部や広背筋の健康を維持することで、ぎっくり腰のリスクを減らし、快適な生活を送ることができるでしょう。
もりいち鍼灸接骨院では、身体を一つのつながりと捉え、痛みの原因を探します。
今まで施術やマッサージを受けてきたけど良くならなかった方は、ぜひ一度当院までお越しください。